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日本吃音・流暢性障害学会

吃音(きつおん)について

2023年10月1日
日本吃音・流暢性障害学会
広報委員会 作成

 このページには、主に吃音のある子どもの保護者や、当事者の方向けに、吃音に関する基本的な情報や対応方法についてまとめています。吃音の基礎知識、幼児期・学童期の子ども、中高生以上の子どもや成人に関する内容を、第一線で活躍されている先生方から寄稿いただきました。吃音に関する知識や理解の向上・吃音の啓発に役立てていただければ幸いです。

【1】吃音の基礎知識

【2】幼児期・学齢期の吃音のある子ども

【3】中高生以上の子ども・成人


【1】吃音の基礎知識

1.症状

 吃音(きつおん、どもり)は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害です。単に「滑らかに話せない(非流暢)」といってもいろいろな症状がありますが、吃音に特徴的な中核症状には、以下の3つがあります。
・音の繰り返し(連発) 例:「か、か、からす」
・引き伸ばし(伸発) 例:「かーーらす」
・ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)例:「・・・・からす」
 吃音では、発話の中核症状だけでなく、二次的な症状として随伴症状(随伴運動)を起こす場合もあります。これは、発話に際して、なんとか声を出そうと、顔面や身体に力を入れ、不必要な身体運動を行うものです。手足を振り下ろしたり、飛び跳ねたり、前屈したり、後屈したり、息を荒げたり、顔をしかめたり、目を固くつぶったりします。幼児期は、様々な随伴症状を起こしますので、家族は驚くことが多いです。
 また、どもらないための工夫(ことばを言い換える、言いやすい言葉を最初に言うなど)をしたり、吃音があることを恥ずかしいと思うようになり、吃音があることを隠そうとして発話を避けるための様々な工夫をしたり、また吃音の悩みを人に打ち明けることも恥ずかしいと思い、孤独感を感じるようになったりもします。吃音の症状をからかわれるなどのいやな経験をすると、社交不安症やうつなどの心理的な問題を生じることもあります。
 吃音の特徴として、状況によって症状が出やすかったり出にくくなったりすることがあります。例えば、歌を歌うときや2人で声を合わせるときや、独り言を言う時など、一時的ですが流暢になる人が多いです。また、調子が良い状態、あるいは悪い状態が数週間〜数ヶ月にわたって続く人も多く、このような症状の変動を(調子の)「波」と呼びます。

2.分類や原因

 分類は、低年齢から発症する発達性吃音(小児期発症流暢症)と、それ以外の獲得性吃音に分けられます。吃音の9割以上は発達性吃音です。
 発達性吃音の原因に関する捉え方は時代に伴って変化してきていますので、インターネットには古い情報と新しい情報が混在しています。最も問題のある間違った原因論としては、親の接し方が悪かった(愛情不足)ことを原因としたり、親が吃音だと思って対応することが原因であるとする吃音診断起因説などが挙げられます。そのため、母親が周囲の人から非難されたという体験談を聞きます。また、俗説としては、吃音のある人の話し方を真似すると吃音になる(伝染する)というのがあって、吃音のある子とは遊んではいけないという差別がありました(今もあるかもしれません)。しかし、2000年頃以降、双子研究、脳研究、遺伝子研究により、環境的要因よりも、生まれ持った体質的な要因が吃音の原因の多くを占めることが分かりました。最近の考え方としては、(吃音診断起因説に基づいて)「吃音は意識させない方がよい」として吃音に気がつかない振りをしたり、子から話しにくいことを相談されても無視するなどして吃音のある子を孤立させるのではなく、「吃音とうまく付き合っていく」方法を支援者と一緒に考えることが大切だとされています。
 獲得性吃音の原因としては、脳腫瘍や脳の外傷、脳卒中など、脳に損傷を受けて起きる「神経原性吃音」があります。また、成人してからは心理的原因によって吃音が生じることがあります(小児期に発症した場合は、精神的な要因があるとしても発達性吃音として対応するのが普通です)。また、薬剤の副作用で吃音が出ることもあります。吃音が出やすくなる障害もあります。必発ではありませんが、ダウン症や早口言語症などでは吃音を生じる人が、それらの障害がない人より多くいます。

3.発達性吃音の発症率と有症率(疫学)

 2〜4歳をピークとしてほとんどが幼児期に発症します。近年の幼児期における調査から、吃音の発症率は約8〜11%程度であることが報告されています。わが国の研究では、3歳までの発症率が8.9%であることが報告されており、海外における近年の報告とかなり近い値です。一方で、海外の調査からは、学童期以降成人までの吃音の時点有症率(ある特定の時点での全人口における吃音のある人の割合)は、1%より少ない0.8%が妥当だといわれています。
 自然治癒率は、Yairiらの研究(2005)によると、吃音が始まって2年後までだと31%、3年後までだと63%、4年後までだと74%であると報告されています。発吃(吃音を発症すること)から4年以上経つと(あるいは8歳以上になると)、自然治癒の確率は減少します。

4.合併症など

 併存症として比較的多いのは、限局性学習症/学習障害(LD)、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、知的発達症/知的能力障害(知的障害)、てんかん、構音障害などです。学齢期の時点から、吃音のある子どもや成人における社交不安症の合併率は吃音のない人よりも高く、自助団体に参加していたり、治療を求めたりする吃音のある成人の約20%から半数近くに社交不安症を合併していることが報告されています。

(参考文献)
  1. Yairi, E., & Ambrose, N. G. (2005). Early childhood stuttering. PRO-ED, pp.167-169 pp.167-169., ISBN 978-0890799857.

文責:菊池良和(九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科)


【2】幼児期・学齢期の吃音のある子ども

1.特徴

 発吃(吃音を発症すること)してすぐの幼児期は、「繰り返し」(連発)の症状が多いです。中には、引き伸ばし(伸発)や、なかなか最初の音が出しにくくなる(難発)症状で始まったり、比較的早い時期にそのような話し方に変わっていったりする子どももいます。
 幼児期は、ことばの発達や発話運動も未熟です。疲労や環境の変化に敏感な子どももいますので、少しの事に影響をされて、吃音の症状がよくなったり悪くなったりすることがあります(変動または、波といいます)。中には全く症状が出なくなる時期もあるかもしれません。4歳(早いお子さんは,2, 3歳でも)になると、自分でも「言いにくい」あるいは、「他の子の話し方と違う」と気がつき始めます。また、周囲の子どもも、違いを不思議に思う時期になり、概ね4歳位になると、「○○ちゃんはなんで、『あああ』ってなるの?」というような指摘が始まることがあります。このような指摘をきっかけに、発話に力が入り、声が出しにくくなったり、身体を動かして(随伴症状を伴って)話そうとしたりするお子さんも出てきます。
 学齢になる頃には、調子の良し悪しはありますが、症状の多い時期、少ない時期の波があるものの、幼児期のように全く吃音が出ない時期を経験することは少なくなります。学齢期は、先生の対応や周囲の友達関係に大きく影響されます。吃音をからかわれたり、発表や音読で思ったように滑らかに話せない経験をすることで、吃音を否定的にとらえ、自分自身をもマイナスに捉えるような認識がおこってくると、難発が強くなったり、言い換えの工夫をしたりするなど、吃音の進展(吃音の状態が悪化していくこと)につながる場合があります。
  ただ、周囲の受け入れが良好で、吃音があっても伸び伸びとおしゃべりして生活できている子どももおり、個人差が大きいです。

2.保護者の対応

 急に吃音が出始めると、保護者はびっくりされるかもしれません。心配そうな表情をせずに、子どもが楽しくおしゃべりを続けられるように、話の内容に耳を傾けて、聞いてあげてください。
 昔は、「吃音に気がつかせない方がよい」という対応が主流でしたが、今は、そのような考え方は否定されています。親子で吃音について話ができる関係づくりを心がけましょう。『どもってもよいから、たくさんおしゃべりしてね』というメッセージを伝えましょう。吃音を恥ずかしいと思って、なんとか吃音を出さないようにと、力を入れてもがくと、吃音は悪化します。この悪化を防ぐ事が大切です。
 もし、「しゃべりにくい」「どうして、ぼくは『あああ』ってなるの?」と訴えることがあったら、お子さんと吃音の話をするチャンスです。お子さんの気持ちに寄り添い、話してくれたことが嬉しいと伝えてあげましょう。

3.周囲の人たち・保育園・幼稚園・学校などへの働きかけ

 きょうだいや、親戚はもちろんのこと、所属している集団の場で、吃音は病気ではないこと、緊張やストレスや家庭環境のみから生じるものではないこと、本人がわざとやっているわけではないことを伝え、クラス内や学童保育内、習い事などで、吃音の理解と啓発の機会を設けてもらえるように働きかけましょう。吃音の指摘やからかいを減らすことによって、本人が安心して吃音を出しながら話し続けてよいのだと実感することができます。リーフレット注1 などを用いることも有効です。

4.専門家による助言・指導

 楽に話しやすくなるために周囲のコミュニケ―ション環境を整える方法(環境調整)や、直接発話に働きかける方法・吃音のことを理解する方法など、年齢や状態に合わせた指導を行います。小児を扱う言語聴覚士や、ことばの教室の教員に、相談しましょう。

文責:原由紀(北里大学 医療衛生学部)

広報委員会注

注1 たとえば、以下のWebページに吃音のリーフレットなどが公開されています。


【3】中高生以上の子ども・成人

1.特徴

 思春期以降になると、吃音の症状は連発や伸発よりも、難発(最初の音が出しにくくなる症状)が中心になります。難発が頻回に出ると発話が困難になり、コミュニケーションに支障をきたします。中高生では部活動や入学面接、大学生ではゼミの発表や就職活動、社会人では職場の電話応対などが、発話に困難を感じやすい場面として挙げられます。
 吃音によって発話場面での失敗体験が重なると、話し始める前に不安や恐怖を感じ、次第に会話や社交を避けるようになります。また、吃音を巧みに隠そうとして、言いにくい単語を言い換えるなどの工夫をすることもあります。この場合、吃音は目立たなくなりますが、実際は吃音が出ないかを日々警戒しながら生活をしているため、ストレスや悩みを抱え込みやすくなります。中高生は社交不安症を発症しやすい時期でもあり、吃音の問題と相まって、不登校やひきこもりに発展するなど学校生活に影響が及ぶこともあります。
 思春期は自身のアイデンティティーを作り上げていく時期です。吃音のほかに複雑な心理的問題が生じたり、進学や就職で慣れ親しんだ人間関係から離れるなど生活環境が変化したりするなかで、吃音が悪化する場合もあります。

2.対応

 中高生は吃音の悩みを一人で抱え込み、打ち明けられないことが少なくありません。親御さんなど周囲の方々は本人の気持ちに寄り添い、吃音に関する正しい情報を得ることが必要でしょう。また、本人が望む場合には、学校に対して苦手な場面(例えば、発表や音読など)への配慮や支援を求め、本人が安心して学校生活を送れるように環境を整えることが大切です。大学生においても発表などで配慮を求めたり、就職活動の負担が多い場合には学生相談室でカウンセラーに相談したりすることは有効でしょう。社会人の場合、就労環境はさまざまですが、吃音について上司や同僚に相談することによって、職場の配置や電話業務などで配慮を得られることがあります。
 本人が吃音の治療を希望する場合、言語聴覚士による発話訓練を受けるという選択肢があります。発話訓練だけで症状が改善しない場合や吃音に対する不安が強い場合は、カウンセリングや心理療法が役立つこともあるでしょう。また、吃音の自助団体に参加し、ほかの吃音のある人と出会うことが心理的な変化(吃音を否定的に捉えることが減るなど)のきっかけになることもあります。

3.吃音の自助団体

 日本には、さまざまな吃音の自助団体a があります。団体によって活動の目的や規模は異なりますが、吃音のある当事者が「吃音があるのは自分だけではない」ということを認識し、共通の体験を語り合い、苦悩を分かち合い、互いに援助し合うことが概ね活動の中心です。そのなかでも、1965年に発足した「」は日本で最も歴史が古く、定例会や全国大会を開催するなど活発に活動している団体です。また近年では、若者を対象とした団体()、女性の集いを開催する団体()、就労支援を行う団体()など特色のある団体が設立されており、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなどのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)やYoutubeなどの動画配信サイトを活用して情報発信が盛んに行われています。
 世界的には、1995年にが設立されています。ISAはを制定するなど、日本を含む世界各地で吃音啓発のための取り組みを展開しています。

4.学校や職場への働きかけ

 発達性吃音は、2005年に施行された発達障害者支援法の対象に含まれており、吃音によるさまざまな困難な状況を説明した医師の診断書または意見書(用紙は住所地役所の福祉課で入手)によって、精神障害者保健福祉手帳が交付されます。また、吃音が重度で、音声言語のみを用いて家族以外と意思伝達が困難であること(音声・言語機能の著しい障害)が認定されると、身体障害者手帳4級が交付されます。これらの手帳が交付されることで福祉的就労の適応対象となります。
 2016年に施行された、学校や職場での吃音に対する差別的言動および差別的扱いは禁止されています。また、発表や電話応対の免除、試験等での面接時間の延長などの合理的配慮を求めることができます。ただし、その際、医師の診断書や言語聴覚士の報告書の提出などが求められる場合があります。

(参考・引用文献)

a 吃音団体(セルフヘルプグループ)

文責:吉澤健太郎(北里大学病院 リハビリテーション部)

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